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    致死性の感染症の急増が実は人工甘味料「トレハロース」によって引き起こされていたことを示す研究結果

    過去にはそこまで重篤な患者を出していなかったのに近年になって猛威を振るい、1年間に3万人近くの死者を出す、という事態を引き起こしているバクテリアが「クロストリジウム・ディフィシル」。抗生物質の効かない「スーパーバグ」との関連性も考えられていたのですが、最新の研究で人工甘味料のトレハロースが患者急増を引き起こしている可能性が示されました。

    Pathogens boosted by food additive
    https://www.nature.com/articles/d41586-017-08775-4

    Dietary trehalose enhances virulence of epidemic Clostridium difficile | Nature
    https://www.nature.com/articles/nature25178

    This food additive is hard to avoid and could make hospital superbugs more deadly - Home | Quirks & Quarks with Bob McDonald | CBC Radio
    http://www.cbc.ca/radio/quirks/this-food-additive-is-hard-to-avoid-and-could-make-hospital-superbugs-more-deadly-1.4470200

    Mysterious explosion of a deadly plague may come down to a sugar in ice cream | Ars Technica
    https://arstechnica.com/science/2018/01/the-curious-case-of-a-boring-sugar-that-may-have-unleashed-a-savage-plague/

    2000年頃からアメリカで患者が急増しだしたクロストリジウム・ディフィシル腸炎は、当初そこまで危険な感染症と思われていませんでしたが、突如として深刻な下痢症として猛威をふるいだし、2011年には年間50万人もの患者が発生し、うち約2万9000人が死亡しました。

    by Centers for Disease Control and Prevention

    そのクロストリジウム・ディフィシルのうち、致死性とされるRT027株とRT078株について、「なぜ突然脅威となったのか?」を調べたところ、意外なことがわかりました。

    抗生物質が効かない「スーパーバグ」がニュースとして報じられることも増え、研究者の中にはクロストリジウム・ディフィシルとスーパーバグの関連性を主張する人もいます。しかし、新たにNatureで発表された研究によると、クロストリジウム・ディフィシルの変化はバクテリアが新たな武器を手に入れたのでも抗生物質の力が弱くなったのでもなく、甘味料として使われるトレハロースにあると見られているとのこと。

    ベイラー医科大学のRobert Britton教授らによる研究チームは、まず最初にクロストリジウム・ディフィシルのうちRT027株とRT078株の遺伝子を解析。その結果、2つの菌株は低濃度のトレハロースを利用して増強されることを発見しました。なお、上記以外の菌株はトレハロースを利用しないと見られています。

    続いて、研究者らはマウスを使った実験を実施。マウスにRT027と、トレハロースを代謝できないよう遺伝子に変更を加えたRT027の2種類を感染させ、トレハロースを溶かした冷水を与えました。すると、通常のRT027はマウス全体の80%を殺してしまったのですが、一方でトレハロースを代謝できないRT027による死亡率は33%にとどまったとのこと。その後、遺伝子に変更を加えていないRT027に感染させたマウスにトレハロース水と普通の水を与えたところ、トレハロース水を与えたマウスの死亡率は比較グループの3倍に上ったそうです。なお、実験において、トレハロースはRT027の繁殖力を上げるというよりも、より多くの毒を生産させているように見えたとのこと。


    同様にRT078についても、トレハロースを代謝できるものと代謝できないものとで比較したところ、クロストリジウム・ディフィシルの感染をシミュレートするバイオリアクター内で低濃度のトレハロースを与えられた前者は、後者よりも強い繁殖力を見せたといいます。

    トレハロースは自然界の多くの動植物・微生物中で確認されているものですが、以前は製造コストが高いために食品産業ではあまり使用されませんでした。しかし、日本のバイオメーカーである林原がでん粉からの安価な大量生産方法を確立。クロストリジウム・ディフィシル腸炎患者が急増し始める2000年までにはアメリカ食品医薬品局の認可を取得し、その翌年にはヨーロッパでも食品への使用が認められたことから、甘味料として食品にしばしば用いられることになりました。

    by LAWJR

    これらの実験結果や過去のデータから、研究者らは、食品中にトレハロースが使われるようになることで、バクテリアがトレハロースを利用できるような形に変異し、トレハロース存在下でクロストリジウム・ディフィシルが猛威を振るうようになったのではないかと考えています。ただし、人間の体内でトレハロースがRT027やRT078に影響を及ぼすほどのレベルになっているかどうかなどは記事執筆時点で不明であり、さらなる研究が求められるところです。

    RT027のように抗生物質のきかないバクテリアはスーパーバグと呼ばれ、抗生物質の乱用が原因で耐性をつけたものと考えられていますが、今回の研究結果は抗生物質ではなく平凡な「甘味料」によって腸内環境が乱されていたという可能性を示唆しているのが大きな点。食品添加物は今や食品産業で多く使用されていますが、私たちが予想だにしない結果を導いている可能性があるわけです。

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