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    法律で規制すべきダンスとは? 警察庁幹部に聞く

    風俗営業法でクラブなどの「踊りの現場」の規制が続き、風営法を改正しようという動きが起きている。ツイッターを使って取材を続けると、警察庁が発表したダンスをめぐる見解について、ダンス営業関係者やダンス愛好者たちから問題視する声が上がっていることがわかった。朝日新聞の取材に対し、警察庁は「善良な風俗を害するものを排除するためにも法の規制は必要」と説明。だが、当局に大きな裁量を与えかねない内容に、反発の声がさらに強まるのは必至だ。

     風俗営業法は、設備を設けて客にダンスをさせ飲食を提供するナイトクラブ的営業や、ダンスを正しく教える能力のある人がダンスを教えることを除くダンスホール的営業について規制。そうした営業に、都道府県公安委員会の許可を得ることを義務づけ、さらに、許可を受けた場合でも原則午前0時(繁華街など一部地域は午前1時)以降の営業を禁じている。

     DJが流す音楽に合わせて客が体を揺らせたり踊ったりするクラブなどで数年前から同法の厳格適用による摘発が相次ぎ、法改正を求める運動が起きている。

     警察庁は、ダンスホール的営業をめぐる一部法令改正に先立ち、パブリックコメントを募集。その結果と解釈を11月末に発表した。その後、警察庁に寄せられた質疑に回答するかたちで12月17日、ダンスをさせる営業についての解釈をまとめ、保安課長名で各都道府県の警察本部長に通達した。

     それによると、ダンスホール的営業に一定の規制を行うのは、「行われ方いかんによっては、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたり、善良の風俗と清浄な風俗環境を害し、又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある」ためと説明。男女がペアになっておどる種類のダンスがこれにあたり、ヒップホップダンスや盆踊りなど、ペアの形態でないものは除外されるとする一方、「床面積がダンスの参加者数に比して著しく狭く、密集してダンスをさせるものなど」は規制対象となりうるとした。

     また、この見解がナイトクラブ的営業の解釈にも適用されるかについては、「適正に営まれれば国民に健全な娯楽を提供するものとなり得るものである一方、営業の行われ方いかんによっては、享楽的雰囲気が過度にわたり、(略)障害を及ぼすおそれがあるため、必要な規制を行っている」とした。

     こうした見解発表に対し、愛好家らからはソーシャルメディアなどで反対意見が相次いでいる。音楽家の大友良英さんは、「戦後間もない頃にできた風俗営業法の中で無理してダンスの解釈を示すより、法律からいったんダンス規定を外すべきでは。ダンスを規定すること自体、基本的な人権に関する問題。ダンスを社会的にちゃんと位置づける方向で議論をするべきだ」と指摘している。

       ◇

     通達発令に先立ち、私は風営法を担当する警察庁幹部を取材した。概要は以下の通り。

     ――法律で規制されるダンスとは何かについて、活発な議論がツイッターなどで続いています。

     なぜ規制しているかを考えて頂きたい。客商売だから、変な人がこれをうまく利用するということも考えられる。そういったことに使われては困る。悪い商売をする人たちの商売につながりかねない。ですから、善良な風俗を害することを排除するためにも、法律の規制は必要なんです。

     ――薬物に関する法律や青少年健全育成に関する法律など、個別の方法で対処するべきではないですか。

     それでは事後的な対応しかできなくなる。これだけたくさん踊る場所がある中で、抑止ができなくなりますね。運転免許制度と同じです。一定の条件のもとでやって下さいよ、ということ。許可を取ればできるのですから、ダンスをするなと言っているわけではない。ちゃんと健全なことができる業種ですから。ダンスを敵視してはいない。

     ――ダンスホール的営業の部分の「ダンス」の解釈は、ナイトクラブ的営業の部分の「ダンス」の解釈でもあるのですか。クラブには、音楽を聴きに行っているだけという客もいると思うのですが。

     ナイトクラブ的営業でいうところのダンスは、基本的にはダンス全般です。踊りの質もあるにはありますが、そこに悪いものがつけこむ余地があるかどうか、というところです。扇情的なものはなく、聴きに行っているだけ、という人もいるでしょう。それでも、問題がある人が入っていける場所でもある。

     ――何をもって健全、善良というのでしょうか。密集とはどういう状態?

     1メートルなのか99センチなのかとかいう話でもないし、そういう部分は、最終的に裁判所が判断していく部分かと思います。法律で明確な基準を設けられるようなものではない。ただ、例えば営業時間の規制がなぜあるかというと深夜はいろんな問題が発生しやすい。踊るだけでもそれなりに盛り上がるが、さらに飲食をして緊張や自制心が解けたら何があるかわからない。多くの人が寝ている時間、行き渡る目がないと、コントロールが行き届かなくなる。

     (摘発が相次いだ)大阪・アメリカ村でも、警察が踏み込む前、地域住民の方が騒音やゴミ問題について何度も注意したりお店にお願いにいったりしている。地元が納得するかは大事なことだと思います。

     踊りたい人の踊りたい気持ちが分からないわけではない。ただ、午前2時や3時までやられて、周りの人はどうでしょうか、ということです。自分たちだけを見てその意識の中で規制撤廃、とおっしゃるけど、もう一つの利害関係者の考えもあるではないですか。

     ――クラブのように常設の場所ではなく、公民館のダンス教室や海の家など影響が広がっています。年1回のダンスイベントなど単発の催しも対象ですか。

     営業というのは、営利の目的をもって継続・反復してやること。公民館で実費程度のものを徴収するだけでは、風営法の対象にはあたりません。一部、そうしたことが問題になった事例は聞いていますが、市も役所。オーバーに受け止めたのではないですか。

     年1回か2回かとか回数ではない。どれだけ利潤を得ているかというのも「営利目的」というところの一つの目安かと思いますが。

     ――結局、法律で規制されるべきダンスとは何なんでしょうか。

     こうした担当になり、私も外国も含めていろいろと調べましたが、ダンス自体の定義はない。踊りとは何だ、という。音楽に合わせて体を動かしたり、色々なダンスが生まれていますから、何かに限定したり列挙するわけにもいかない。どこまでいっても厳密な定義なんてできない。おおまかなコンセンサスしかない。だから自分たちのやり方が、まわりから理解されるかというところの議論が大切だと思うんです。私には、その部分がすっ飛んでいるように見える。

     踊っている人の方が、よほど踊りには詳しいでしょう。私たちは、それによってだれかが搾取されたり被害にあわないためのことをしている。

     スナックも、ビリヤードも業界の努力があって、風営法の規制がかわった。実態をみて、理性的に議論をしたいものです。

    朝日新聞 2012年12月28日0時5分

    //////////////////////////////



    風営法は1948年、売春婦がダンサーとして客をとっていた時代に、風紀を正す目的で制定された。
    ビリヤードや社交ダンスなど、後に規制対象から外れた業種もある。
    無許可営業は風営法違反となり、2年以下の懲役か200万円以下の罰金となる。

    風俗営業法による規制で営業許可がとれずに廃業に追い込まれたクラブや、摘発されたクラブがある。
    解釈によって様々な規制になるため、東京・大阪・京都などで反対する署名運動が行われている。
    署名運動をしている「Let's DANCE署名推進委員会」には、呼びかけ人の一人に坂本龍一やいとうせいこうも名を連ねている。
    2012年12月28日、目標とした10万人の署名を達成したと発表している。

    ドラッグや未成年の飲酒、暴力団とのつながり、騒音や喧嘩などの近隣住民からの苦情など、問題とされる面と純粋に音楽と踊る楽しさを表現できる健全な面。
    また、若者のエネルギー発散の場にもなる。
    一部の問題だけで全体を規制するという方法では実際には解決できないとも言える。
    許可とって午前0時で閉店しても、ドラッグ・未成年の飲酒・暴力団とつながることはできるのだから。


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